院長あいさつ
1.コロナ禍に求められる医療
みなさまお元気でしょうか。世界中がコロナ禍から抜け出せない日々が続いています。それでも第6波あたりから状況に変化が見られるようになってきました。私たちがウイルスを嫌悪するように、おそらくウイルスは、ワクチンで対抗する私たちを嫌がっているでしょう。人類は何度もパンデミックの危機に遭遇しましたが、何とか乗り越えてきました。ただし従前は乗り切るまでの経緯がはっきりしないので、何となくヒトがウイルスを駆除したように感じていますが、実際のところは、ヒトとウイルスは何とか折り合いをつけてきたのだろうと思います。ただ交通網や情報網が世界規模になって以降、今回ほどのパンデミックは初めてですし、連日の感染者数やウイルスの変異が、これほど正確かつ大規模に記録され発信されたこともありません。ヒトとウイルスがどういう道筋で調和に達するのか、新しい情報が得られるような気がしています。それはそれとして、私たち医療者には、嵐にもコロナにも負けず、雨の日も風の日も、日常からぶれることのない診療を粛々と継続することが求められています。その際、大規模の病院であるほど大事なことは、多職種で行う共同作業を絶やさないことです。医療者同士は常に「①情報共有」し、個々人は「②適材適所」に配置される必要があります。この二つの条件を充足していれば、病院全体を一艘の船に見立てて、正しい方向へと進むことができるはずです。わたしは、次に述べる3つの目標を引き続き追い求めていきたいと思います。
2. 三つの目標
1)健康病院
病院は、思いがけず病気や怪我に遭遇した人たちの体と心を癒すための場所です。わたしは病院そのものが健康であり、健全であることが、患者さんを癒すために必要であると考えています。健康な病院とは、病院で働く職員自身が健康であり、健全な医療環境の実現にあります。健康で健全な医療により、患者さんを健康で健全にする。そのような理想の病院を、私は「健康病院」と呼んでいます。病院を健康な状態に保つためには、良好な職場環境が必要です。一方、もっとも不健康な病院とは、医療事故の多発する病院です。わたしは職場の働き方改革をより推進することで、医療事故をきたさない「健康病院」をめざします。
2)持続可能(SDGs)病院
当院のような高度急性期医療を担う病院には、当然ながら、知識や技術の優れた医師・看護師・薬剤師・歯科医師・検査技師など、さまざまな職種の専門家が必要です。そして、医療専門職のスキルを目の前の患者さんに集中させるためには、彼ら彼女らを支える事務職の働きが不可欠です。医療にボランティアの心構えは当然ながら必要です。しかし、それのみでは持続可能な病院を構築することはできません。患者さんのための優良な医療を持続的に提供するためには、健全な医療経営がどうしても必要です。知識・技術に優れた医療者と優秀な事務職がタッグを組んだ、盤石な経営基盤に支えられた病院、それを私は「持続可能(SDGs)病院」と呼んでいます。
3)共棲チーム病院
従来、医療者は患者さんを家族ととらえ、父親・母親としての医療を理想としていました。ヒポクラテスの教えがその典型です。その後、医療界の様々な負の遺産から、インフォームド・コンセントや診療ガイドラインが生まれ、医療者と患者さんは互いに対等な立場であり、十分な説明、患者さんの理解および納得、そして治療法の選択と同意のもとに行われる医療が求められるようになりました。要約すれば、それは医療者と患者さんが同じ目的に向かって互いを尊重しあい、協働作業として医療を行うというものです。このような医療者と患者さんとが互いに助け合う病院を、私は「共棲チーム病院」と呼んでいます。
3.まとめ
当院は、佐世保市が属する県北地区住民の医療を支えることを第一義とする病院です。わたしは当院の理事長・院長として、地域住民の健康を守るための「共棲チームによる持続可能で健康な病院」の経営および運営をめざします。
令和4年4月吉日
理事長・院長 増﨑 英明(ますざき ひであき)