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【シリーズ:病院長の植物園(第7回)】ミヤマキリシマ

2022.06.02

何年かに一度は九重に登ります。

登山はきついですが、きっと思い出が残ります。

長者原に車を止め、仲間とそろって歩き出すと、すぐに日常は薄れていきます。

はじめて九重を訪れたときは、たしか5月の連休で、馬酔木が満開だった一方、ミヤマキリシマはところどころにポツポツと咲いているような状況でした。

法華院温泉までたどり着いて休んだときのこと、休憩所の壁に色紙を見つけました。

そこに「山の湯のあまたのなかの法華院」という句が書いてあり、深田久弥の署名がありました。

深田は有名な『日本百名山』を残しています。

色紙の日付は、昭和34年2月21日とありました。

紐解いてみると、深田は昭和34年3月から百名山を起筆しています。

私の脳裏に思わず「山の湯に人の残せし俳句かな」そんな句が浮かんできました。

それから何度も九重に登り、法華院のぬるい温泉に入りました。

そのたびに大きな思い出や、人に話せないくらいの小さな思い出が残りました。

登山のたびに、季節ごとの花たちが迎えてくれました。

今年もきっと連休明けのころは、ミヤマキリシマの群生が迎えてくれたことでしょう。

コロナとの距離が近づいたり離れたりする中で、そんなことを思いました。

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