消化器外科
特徴・方針等
消化器外科では主に悪性疾患では胃癌、大腸癌(大腸腫瘍)、肝癌、胆道癌、膵癌、膵嚢胞性腫瘍、消化管GISTを、良性疾患では胆石症、ヘルニア、虫垂炎などに対して手術を行っています。食道癌に対しては長崎大学病院と連携して、化学療法や放射線治療を組み合わせた集学的治療と手術を協力して行っています。
胃癌に対しては、基本的に胃癌治療ガイドラインを遵守し治療に当たっています。早期胃癌の治療には内科的に施行される内視鏡的粘膜切除術(EMR)または内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)と胃切除(縮小手術)が適応されています。当院では平成18年より早期胃癌に対しては“腹腔鏡手術”を導入し施行してきています。ひとつひとつの傷を小さくすることで術後の疼痛も少なく創痕も目立ちにくくなります。創が小さくなると操作性に問題が出てきそうに想像されるかもしれませんが、創が小さいからと言って癌の根治性は損なわれません。手術後の症例や術前の進行症例に対しては、積極的に化学療法を導入しています。術前の化学療法導入により切除できなかったものが切除できるようになったり、根治性が上昇したりする可能性があります。
大腸癌(大腸腫瘍)に対しても大腸癌治療ガイドラインを遵守し治療しています。症例数は九州でも1,2位を争うほど多い施設の一つです。当院ではいち早く2003年より腹腔鏡手術を取り入れ治療に当たり、治療成績も開腹手術と遜色ない結果を得ています。胃癌と同様に創が小さいため術後疼痛も少なく術後回復が早いのが特徴です。2009年までは腹腔鏡の比率は20%程度でしたが、2010年より約60%弱が腹腔鏡手術で行われるようになってきており、標準手術の一つとして採用しています。また、直腸の早期癌や直腸カルチノイドや腺腫などについては、経肛門操作で病巣を切除する術式を選択して行っています。最近の大腸癌の化学療法の変遷はめざましく日進月歩の状態です。当院では最新の抗腫瘍薬を用いた集学的治療を積極的に施行しています。分子標的治療(抗EGFR抗体や抗VEGF抗体など)を取り入れ最新の化学療法で治療を行っています。2010年11月の段階で、抗VGEF抗体治療薬使用例は100例以上、抗EGFR抗体治療薬は30例以上の症例経験があります。
肝癌には原発性肝細胞癌と転移性肝癌がありますが、基本的に手術を施行しています。患者さんの状態によりますが基本的に系統的切除を心掛けています。最近は手術器具の進歩もありその状況に応じた手術器具を駆使して切離しています。手術困難例などに対してはラジオ波焼灼術も施行しています。通常は経皮的に焼灼するところですが、肝表面にあったりなどして経皮的には困難症例では開腹し焼灼しています。その他、肝内胆管癌、肝嚢胞腺癌などの手術も施行しています。
胆道癌、膵癌・膵嚢胞性腫瘍でも基本的に手術を施行しています。膵頭部と十二指腸を切除する“膵頭十二指腸切除術”が基本術式となります。膵液瘻(膵臓と空腸吻合からの膵臓の消化液の漏れ)が一番の合併症となりますが当院では膵管空腸粘膜連続吻合を行っており良好な治療成績を収めています。
良性疾患では胆石症に対して腹腔鏡手術を年間80-90例施行しています。ヘルニアに関しても腹腔鏡下に手術することが増えてきています。tension free methodとしてdirect Kugel method やultrapro hernia system法などを用い創痛が少なくなるように心掛けています。また急性腹症としての消化管穿孔は緊急手術を行うことが多く、急性虫垂炎や腸閉塞に対しては状態を評価して治療方針の判断をしています。
診療体制
外科の診療体制は、消化器、呼吸器、乳腺・内分泌、小児の疾患に対して専門医が担当する体制を取っております。消化器を石川副院長、重政部長、荒木医長、荒井医長、村上医長、呼吸器・縦隔を中村管理診療部長、森野部長、乳腺・内分泌を馬場医長、外科一般を稲村医長、大石副医長、榊原副医長、藤田医師、小児を稲村医長で担当しております。その他、小児外科領域は月に1~2回長崎大学腫瘍外科・小児外科グループ田浦医師による診察を行っております。
実績
手術症例数(全身麻酔、腰椎麻酔、局所麻酔別)
2012年 | 2013年 | 2014年 | 2015年 | 2016年 | |
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全身麻酔 | 1135例 | 1183例 | 1056例 | 997例 | 1038例 |
脊椎麻酔 | 59例 | 31例 | 14例 | 11例 | 16例 |
局所麻酔 | 175例 | 191例 | 252例 | 216例 | 252例 |
総数 | 1369例 | 1405例 | 1322例 | 1224例 | 1306例 |
各年度別の主要疾患に対する手術の症例数
2012年 | 2013年 | 2014年 | 2015年 | 2016年 | |
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肺癌 | 61例 | 76例 | 95例 (転移例 7例) |
88例 (転移例 8例) |
111例 (転移例 15例) |
乳癌 | 59例 | 79例 | 51例 | 49例 | 53例 |
胃癌 | 99例 | 95例 | 68例 | 97例 | 94例 |
大腸癌 | 201例 | 245例 | 228例 | 206例 | 182例 |
食道癌 | 12例 | 4例 | 1例 | 0例 | 0例 |
肝胆膵癌 | 59例 | 69例 | 73例 | 56例 | 57例 |
施設認定
当院は癌診療連携拠点病院に指定されており、外科における各学会の認定、指定施設は以下の通りです。従って当院外科で研修することで、各学会の認定医を取得することが可能になります。
認定・指定施設一覧
・日本外科学会専門医制度修練施設
・日本消化器外科学会専門医修練施設
・呼吸器外科専門医合同委員会認定修練基幹施設
・日本乳腺学会認定医専門医制度認定施設
・日本消化器病学会認定医制度認定施設
・日本消化器内視鏡学会認定指導施設
・日本がん治療認定医機構認定研修施設
・救急科専門医指定施設