放射線治療部門
当院の装置・実績
治療計画用CT
放射線には、細胞内の遺伝子を直接的・間接的に死滅させる効果があります。その効果は、正常細胞とがん細胞などの異常に増殖する細胞との間には差があり、その差を利用して治療を行っているものが、放射線治療です。 放射線治療には人体の外部から病変部に照射する「外部照射」・人体の組織などに挿入して行う「小線源治療」・微量の放射線物質を病変部に集まる特性を利用した「内用療法」があります。
当院の放射線治療室には、高エネルギー X線放射線照射装置VARIAN社製 CLINAC iX-S (X線6,10MV、電子線6,9,12,16,20MeV)、VARIAN社製 True Beam STx (X線4,6,10MV,6MV FFF(Flattening Filter Free), 10MV FFF、電子線4,6,9,12,16,20MeV)、3次元治療計画装置Eclipse(VARIAN社製)、が設置されて外部照射を実施しています。
診断の結果により放射線治療の適応である疾患で治療をする事になったら、主治医からの紹介で放射線治療医へ紹介されます。放射線治療医から放射線治療についての説明を受け、放射線治療を実施する事になると治療開始前に改めて治療計画用のCT画像を撮影して、照射部位を決定・治療計画を行い、装置を設定して照射を行います。
以前は技術的に1門~2門照射、せいぜい3門照射までしか行えず、どうしても腫瘍周囲の正常臓器の障害を避けることができませんでした。
CTを撮影し、MRI画像などの利用をして行う3次元的な治療計画ができる様になってからは、4門からそれ以上の多門照射が可能となり、より正確に、より周辺臓器の障害をすくなくする照射が可能となりました。また、より少ない副作用で、病変部にはより多量の照射が可能となり、根治性が向上します。現在はマルチリーフを用いて、照射野の形態(絞り)を自動的に作成でき、不整形の照射野も容易に作成可能です。
更に、照射直前や照射中、照射後にX線撮影やCBCT(cone beam computed tomography)撮影画像を利用することにより照射部位の確認ができる様になり、位置の再現性が高くなる治療ができる様になりました。近年では、これらの技術を組み合わせて限定した腫瘍に対する限局した腫瘍に対する定位放射線治療(SRT ;Stereotactic Radiation Therapy)や強度変調放射線治療(IMRT ; Intensity Modulated Radiation Therapy)ができる様になり、根治治療の可能になりつつあります。
放射線治療は我が国では癌末期の患者さんへの姑息治療としての使用が主ですが、本来は早期癌であれば外科治療にも匹敵し、なおかつ機能が温存される、きわめて優れた治療法です。
放射線治療患者数
年度 | 2019 | 2020 | 2021 | 2022 | 2023 |
放射線治療患者数(新患) (人) | 425 | 419 | 437 | 469 | 483 |
放射線治療患者数(新患+再患) (人) | 514 | 501 | 512 | 469 | 589 |
特殊治療
年度 | 2019 | 2020 | 2021 | 2022 | 2023 |
定位放射線照射(脳) (人) | 37 | 34 | 39 | 28 | 35 |
定位放射線照射(体幹部) (人) | 26 | 30 | 53 | 79 | 69 |
・肺がん (人) | 11 | 18 | 34 | 43 | 38 |
・肝がん (人) | 19 | 12 | 19 | 36 | 31 |
強度変調放射線治療(IMRT)の実人数 (人) | 105 | 88 | 89 | 91 | 120 |
・頭頸部がん (人) | 29 | 25 | 22 | 26 | 44 |
・前立腺がん (人) | 62 | 63 | 60 | 57 | 68 |
・脳腫瘍(人) | 3 | 0 | 0 | 1 | 2 |
・皮膚がん(人) | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 |
当院のスタッフは以下のような資格を所有しております。
日本医学放射線学会「放射線治療専門医」及び日本放射線腫瘍学会「認定医」 2名
関連サイト 日本医学放射線学会 専門医一覧 http://www.radiology.jp/specialist/list_t.html
日本放射線治療専門技師認定機構 「放射線治療専門放射線技師」 4名
関連サイト 放射線治療専門放射線技師認定者 https://www.radiation-therapy.jp/certificated.shtml
一般財団法人医学物理士認定機構「医学物理士」 1名
関連サイト 医学物理士認定機構 医学物理士名簿 http://www.jbmp.org/certification/list/
放射線治療品質管理機構「品質管理士」 2名
関連サイト 放射線治療品質管理機構 放射線治療品質管理士認定者名簿 https://www.qcrt.org/
当院は、日本放射線腫瘍学会が放射線治療の水準を策定し、認定している「JASTRO認定施設」として認可されています。
関連サイト JASTRO認定施設一覧 https://www.jastro.or.jp/medicalpersonnel/recognition/jastro/jastro.html
日本放射線腫瘍学会 認定施設認定証
治療用照射装置出力線量の第三者機関による測定実施証明書
計量法登録事業者による治療用線量計校正実施証明書
放射線治療のQ&A
放射線治療とは
正常組織の放射線感受性と腫瘍の放射線感受性の違いを利用して治療を行います。
一回の治療時間
特殊な場合を除き約5分~10分間で、そのうち照射をしている時間は2~3分間です。
放射線治療の特徴
非侵襲:照射中熱くも痛くもありません。
手術と同様の局所療法:放射線が照射されている部分に対してのみ効果を発揮します。
機能・形態が保存的:組織欠損を来たさない為、機能や、形態を保ちつつ治癒をもたらします。
放射線治療の問題点
放射線障害を起こす場合があります。
急性障害として放射線宿酔といって気分が悪くなったり、倦怠感、食欲がなくなったりする場合があります。
照射部位により、放射性肺炎、下痢、脱毛、皮膚・粘膜症状などを起こす場合があります。
晩期障害として、潰瘍、白内障などを起こす場合があります。
定位放射線手術・定位放射線治療
病巣に対して多方向から放射線を集中させることで、正常組織への影響を抑えつつ、高い治療効果が期待出来る照射方法です。
佐世保市総合医療センターでは、頭部、肝臓、肺に対して定位照射を行っています。
頭部定位照射
主な適応疾患:脳腫瘍、がん脳転移病変、脳動静脈奇形
短冊上の細長いブロックを組み合わせることで、いびつな形状の病変であっても囲うことが可能です。
照射回数
1回の手技で完結する定位放射線手術、複数回(平均10~15回)に分けて照射する定位放射線治療に分類されます。
病巣の大きさ、位置に加え、患者様の全身状態を考慮した上で、放射線治療専門医が最善の方法を決定します。
照射線量
定位放射線手術:病巣に対し、15~20Gy
定位放射線治療:病巣に対し、1回当たり3~5Gy
※病巣の大きさ、位置によって変わる場合があります。
入室してから退室までの所要時間
定位放射線手術:平均20分
定位放射線治療:平均10分
※病巣が複数ある場合、さらに長くなります。
治療までのスケジュール
〈放射線治療紹介当日〉
・放射線治療専門医、放射線治療専門看護師による説明
・治療中に動かないようにするための固定具の作成
・治療中、安静を保つための体位決定
・治療計画用CT撮影
※病巣が複数ある場合、さらに長くなります。
その後、計画立案、治療の精度、安全性を担保するための検証作業に3~4日程度時間を要します。
それを踏まえて、来院日時の調整を行います。
肝臓定位照射
主な適応疾患:原発性肝臓がん、肝転移病変
短冊上の細長いブロックを組み合わせることで、いびつな形状の病変であっても囲うことが可能です。
肝臓は呼吸によって動きますので、正常な肝臓組織への影響を抑える目的で、当センターでは、呼吸停止の状態で治療を行っています。
そのためには、安定した息止めが重要になりますので、治療計画CTを撮影する前に専用の器具を用いて息止めの練習を行います。(写真1)
照射本番も同様に、呼吸状態をモニタリングする器具を腹部のよく動く箇所に載せ、息が止まっているのを確認して照射します。(写真2~4)
照射線量
40Gy
※病巣の大きさ、位置によって変わる場合があります。
入室してから退室までの所要時間
平均20分~30分
治療までのスケジュール
〈放射線治療紹介当日〉※所要時間:1~2時間程度
・放射線治療専門医、放射線治療専門看護師による説明
・治療中、安静を保つための体位決定
・呼吸練習
・治療計画用CT撮影
その後、計画立案、治療の精度、安全性を担保するための検証作業に3~4日程度時間を要します。
それを踏まえて、来院日時の調整を行います。
肺定位照射
主な適応疾患:原発性肺がん、肺転移病変
短冊上の細長いブロックを組み合わせることで、いびつな形状の病変であっても囲うことが可能です。
肺内は呼吸によって動きますので、正常な肺組織への影響を抑える目的で、当センターでは、呼吸停止の状態で治療を行っています。
そのためには、安定した息止めが重要になりますので、治療計画CTを撮影する前に専用の器具を用いて息止めの練習を行います。(写真1)
照射本番も同様に、呼吸状態をモニタリングする器具を腹部のよく動く箇所に載せ、息が止まっているのを確認して照射します。(写真2~4)
照射回数
4回
照射線量
40Gy
※病巣の大きさ、位置によって変わる場合があります。
入室してから退室までの所要時間
平均20分~30分
治療までのスケジュール
〈放射線治療紹介当日〉※所要時間:1~2時間程度
・放射線治療専門医、放射線治療専門看護師による説明
・治療中、安静を保つための体位決定
・呼吸練習
・治療計画用CT撮影
その後、計画立案、治療の精度、安全性を担保するための検証作業に3~4日程度時間を要します。
それを踏まえて、来院日時の調整を行います。
強度変調放射線治療【IMRT】
強度変調放射線治療とは、Intensity Modulated Radiation Therapy の頭文字を略してIMRTと呼びます。これは専用のコンピュータを用いて放射線の強度(線量)を変調させることにより病巣の形状に合った放射線の線量を適切に照射することが可能な照射方法のひとつです。この方法により標的の病巣に隣接する正常な組織への放射線量の抑制も可能になりました(図1参照)。
現在、当院では放射線治療装置を回転させることによってIMRTを行うVMATという手法で治療をしています(図2参照)。このことにより治療時間の短縮もできるようになります。
現在の治療部位に関しては、前立腺・頭頸部に対する治療を実施しています。
図1:前立腺に対する治療計画例
※図1の場合、標的となる病巣は前立腺(───で囲んだ部分)であり、正常な組織とは直腸(・・・・・で囲んだ部分)やその他の組織となります。→で示す様に従来の放射線治療であると直腸やその他の正常組織により多くの放射線が当たってしましますが、IMRTの場合はその割合を低減させることができるようなります。(青色から赤色になるにつれて放射線の量は強くなります。)
図2:前立腺に対するVMATでの照射例
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図2は実際の治療の様子で放射線治療装置が身体の周りを回転しながら照射をします(左図上段)。
その際、照射する形を形成するMLC(左図下段)というものがコンピュータの指示通りに動作することにより放射線を当てたい場所だけに照射する事が可能になります。右図では赤い部分に放射線が当たるようにコンピュータが計算をしてそれをシュミレーションしている図になります。黄色く動いているものがコンピュータ上でのMLCというものになります。