臨床検査科
■特徴・方針等
臨床検査室は、臨床医の診療行為(診断・治療・経過観察)において客観的指針となる多種多様な検査情報を、臨床サイドへ正確かつ迅速に報告する役割を担っています。当科では日常的に遭遇する検査値異常に関する病態解釈の勉強会やR-CPCを定期的に実施しながら、検査室スタッフのデータリテラシーの研鑽を積み重ね、検査室機能のレベルアップを図っています。また臨床医や他部門の医療スタッフからのコンサルテーションも受けています。
■診療科の概要
血液・尿・各種体液・喀痰等の検体の検査を血液・一般部門、生化学部門、輸血部門、微生物部門がそれぞれ担当し、生理部門が超音波検査・心電図・脳波・呼吸機能検査等の生理機能検査を必要とされる患者さんに応対しています。そこで、これらの各種検査情報を総合的に活用することを目指して、当検査情報と熱型・血圧・脈拍などのバイタル情報さらに治療に関する情報を融合させた多次元グラフを用いた病態の評価法に取り組み、既存の検査情報をさらに最大限に有効利用する方法を模索しています。治療経過に伴う病態変動を視覚的に表現する検査値グラフとしての活用と同時に、医療経済を念頭においた検査頻度の適正性を検証するツールとしての試用も検討しています。
■実績
難治性AML治療の前半期の検査と治療内容を一覧する時系列経過図の例を示します。
検査値の多次元グラフを用いた各事象の時相分析には、①治療対象疾患の診断根拠の明確化、②病態の重症度推移の把握、③検査異常の相互関連性の的確な評価、④合併する病態の除外診断、⑤治療の効果判定、⑥有害事象のチェック等を、より客観的かつ緻密な評価を比較的容易に実現できる可能性があります。呈示の経過図のように、骨髄所見と貧血・白血球分類・血小板数およびRBC・PCの輸血頻度の変動推移は白血病に対する化学療法/骨髄移植の治療効果を判断する重要な指標となり、好中球減少期と熱型・炎症マーカー・血液培養所見と実施した感染症治療との時系列的関連性を追うと白血病支持療法の成否を検証することもできます。また、薬剤の有害事象として生じる肝障害や腎障害だけでなく、多次元グラフだから観えてくる相互関連性のある事象が他にも多々あるように感じます。
検査結果を通じて病状経過を俯瞰できる情報統合ツールとして、短時間のうちに情報共有を求められるチーム医療の現場で利用可能な実用性を最終目標に、対象疾患ごとに最適な情報項目の選択性・グラフ表現の自由度の確保、観察期間の年・月・週・日単位の切り換えによる時間的ズームイン・ズームアウト機能、さらに検査データと臨床データを日々更新する機能など、多種多様な問題を解決すべく日々精進しています。